人って変わるし、 変わっていけば
いいと思うんです。

株式会社サニーサイド専務取締役
一般社団法人toki-line
キャリアコンサルタント
名古谷 直久

サニーサイドの創業時メンバーである名古谷さん。いつも温かいまなざしで
当社の全事業のマネジメントを行う、社員にとっては頼れる存在です。
「昔の自分は、いまこうして働いていることを想像もしていなかった」と話す名古谷さんが、
いま特に力を入れているのが若者の就労支援です。その理由を聞いてみましょう。

サニーサイドに出会うまで、どのような経緯がありましたか?

僕、中学校で不登校になって、中学高校は休みながら卒業したんです。とにかく実家を出たくて、香川の短大にとりあえず来た。でも短大を卒業したら就職ですよね。そのときの僕は、学校もちゃんと行けていないのに働くなんて無理だよね、正社員なんかなれないよと思っていました。

ただ実家には帰りたくない。一人暮らしを維持するためにはバイトで何とか生計を立てようと考え、そのまま就職活動を一切せずにバイトから仕事を始めました。

当然社会的な保障はない。風邪で休んだりすると収入がなくなるから家賃が払えない。バイトを2つ3つ掛け持ちして朝から翌日の朝方まで働く生活をしていました。中学に行けないほどだから器用な人間でもなく、当時は仕事をしてもうまくいかないことの方が多いぐらいで。

2年ほど経ったときに清掃のバイトの求人が出たので、そこに行こうと。朝会社に集まり、みんなで車に乗って事務所や学校やいろんなオフィスビルに行き、床にワックスをかけたり、窓ガラスをクリーニングする仕事でした。それならいけるんじゃないかと思ったんです。

そこで現在の社長である多田と、いまの仕事に出会ったんですね。

そうです。半年ほど働いていたら、多田から正社員にならないかと言われたんですが、当然、断った(笑)。 だけど何回も言うから、何かの縁かなと正社員の話を受けました。バイト生活が結構しんどかったのもあって。清掃業務のパートさんの管理や品質の管理をやる役割としての「正社員」になったんです。

最初にホテルの清掃をやりました。バイトさんのほうが僕より全然仕事ができるし、ベッドメイクもめちゃくちゃ速い。僕は後から入っているので、みんなに教えてもらって、助けてもらいながらやっている。でも組織としては僕が現場の管理者っていう不思議な枠組みでした。

バイトで来ている主婦さんや学生さんは僕より年上の方が多く、コミュニケーションを取りながら現場を運営しないといけないのですが、なんせ僕、人とのコミュニケーションが苦手で・・・。できない前提の正社員でした。すると周りの人に助けられるんですよ。

人に助けてもらう中で僕も周りとコミュニケーションが取れるようになったし、「若いのに責任者で頑張っているね」なんて言ってもらえたりして、徐々に仕事が楽しいなと思えてきました。

コミュニケーションの下手さゆえの失敗もたくさんして、めちゃくちゃ怒られたりもしたんですけどね。でもその時思ったのは、「多田をはじめ周りがフォローしてくれて、支えられて、今が成り立っている。であれば、自分ももうちょっと頑張らないといけないんじゃないの?」と。
そのまま正社員で6,7年頑張って、多田が独立するときに僕もサニーサイドに入社したんです。

いま名古谷さんが取り組んでいることについて教えてください。

サニーサイドでは清掃事業の管理責任者の仕事をしていますが、並行して2020年にトキラインの理事として就労支援事業を立ち上げ、精力的に取り組んでいます。今後はサニーサイドとしてこの事業をより活性化していきます。

今行っているのは地域若者サポートステーションという厚生労働省のサービスで、香川県ではトキラインが受託してかがわ若者サポートステーションの運営をしています。15歳から49歳の人で仕事に不安を持っている人、働いたことがない人、転職したいけれどどうしたらいいか分からないという人の支援をしますよ、という場所です。

15歳から49歳だから、誰が利用してもいいわけです。僕だって該当しますし、いわゆるひきこもりの方とか、発達障害を持っている子とか、いろんな人が利用するための場所です。さっきの話で言うと、20歳だった頃の僕のような人にだって役立つ場所です。僕は運良くご縁や応援があって今ここにいますけど、そうじゃなかったらバイトが行き詰まり、年とともに生活がいつ困窮してもおかしくなかった。そんな時に使える場所です。

でも、そのときの僕は「サポート施設があるから行った方がいいよ」って誰かに言われたとしても、行かなかったと思いますね。なぜならプライドが邪魔をするから。そこに行く自分は負け組だって思ってしまうから、何とか他のバイトを探そうとするか、引きこもっていたかもしれない。

だからこそ、僕らは「ここは誰がどう利用しても自由な場所なんだ」と伝えて周知していかないといけない。じゃないと本当に必要な人にサポートが届かない。まだまだ先は長いですけど、結構大事な役割だと考えています。

今はひきこもりとか状況が良くないとしても、10年後は違うかもしれない。社会に出るとか、人間的に自立するタイミングって、本来は人それぞれですよね。
1回ドロップアウトしたから人生は終わり、じゃない。サポートを利用して、その人がその人なりの人生の達成感や自立をつかめればそれでOK。社会ってそうあるべきだと思うんです。

そのためにサニーサイドは、働いたことがない人や、働いたけど失敗した人、ちょっと不安を抱えている人がここでバイトを始めて、徐々にステップアップをしてほしい。 ここで働いた実績と自信を持って次のステップに進み、社会の中で自分の人生をより良いものにしてほしい。

企業においても、人に合わせてできる作業を細分化したり、求める仕事の視点を変えてもらうと、雇用につながったり、業務運営がより円滑に進むようになる。企業の発展につながる仕事のモデルがあることを理解していただくと、協力する会社が増える。すると、働く場が社会に広がっていく。僕たちは就労支援を通して、そんな社会づくりにチャレンジしている感じですね。

サニーサイドで働く時に一番大切なことは何でしょうか。

現場では「どうやったらこれが周りの人に役に立つか」とか「お客様に満足してもらえるようにいかにレベルアップしていけるか」を考えて管理運営していくので、コミュニケーション、「聞ける」ことでしょうか。

でもスキルとしてのうまさではなくて、そういった姿勢やその人らしさが大切ですよね。真面目にやっていたら周りが助けてくれる。「この人のためだったら頑張ってみようかな」って思ってもらえるような・・・。どれだけ真剣に目の前の人と向き合うかということですよね。やっぱり最後はまじめさとか正直さじゃないでしょうか。

清掃作業はチーム仕事ですし、サニーサイドは会社自体にいろんな人がいて、それぞれの得意を生かして働いている組織なので、全部がチームプレーなんですよ。チームの中で役割分担をしつつ自分の責任を果たしていくことが大事だと思います。

名古谷さんならではの人生経験やキャリア経験から思う、サニーサイドで実現したいこと、めざす社会はどんなものですか。

サニーサイドはまだ若い会社なので、事業としてもっと発展していかなきゃいけないですし、人に寛容であったり優しかったり、何より中にいる人たちが楽しかったり。そういった会社の風土作りをしっかりやっていくことも大事だと思っています。新しく始めた就労支援事業では、誰でも社会と接点が持てる場にしたいと思います。

社会においては、うまくいかない時期があったとしても、それで人生終わりじゃない。誰だって人生山あり谷ありであり得るし、登り続ける人生なんかあり得ない。それが許容される社会だといいですよね。
「うん、そうだよね」って思う仲間が、サニーサイドに増えていくといいなと思います。